betweenthebooks.com

カメラを使わない作品 第7回 Googleストリートビュー 3(後編) Works without Camera Google Street View #3

without comments

Googleストリートビューを使った作品、第3回、Doug Rickard(ダグ・リカルド)の写真集『A New American Picture』を紹介しています。

前編はこちら

リカルドは独学で写真を学び、写真を撮りながら、有名な写真記事アーカイブサイトAmerican Suburb X*1を2008年に立ち上げた後、ストリートビューを使って作品をつくるようになります。

Works without Camera Google Street View #3, I am introducing a photobook.

The title is A New American Picture. Photographer Doug Rickard  used images from Google Street View to make this series of work.

Please read the first part.

#83.016417, Detroit, MI(2009), 2010 from A New American Picture

ストリートビュー、家系、アメリカの暗部

インタビュアー:どういうきっかけでGoogle Street View*2を利用するようになったんだい?

リカルド:サイトを立ち上げて約1年後の2009年にストリートビューを発見したんだ。当時ウェブを使ってアメリカに関して写真表現ができないか模索していた。

インタビュアー:そしてストリートビューで見たイメージが、あなたが学んだ写真の歴史とつながっていくわけだよね。

リカルド:そう。FSA(農業保障局)*3の写真アーカイブがウェブ上に公開されていて*4、それらを見ることに長い時間を費やした。そしてストリートビューで見た光景は80年前に偉大な写真家によって撮られた写真とつながっていると思ったんだ。

当時大恐慌の最中にあったアメリカで、政府がプロパガンダのために貧しい農民の生活を記録するプロジェクトを立ち上げました。リカルドはこの1930年代ごろのドキュメンタリー写真のアーカイブをネット上で見ていて、ストリートビューに写ったシーンとのリンクを感じたそうです。

FSAのプロジェクトで撮られた写真をいくつか見てみましょう。

Erin O’Toole: What led you to experiment with Google Street View?

Doug Rickard: I discovered Street View in 2009, about a year after I started ASX. I was looking for a way to use the web to do something photographic on America. And I stumble onto it.

EO: And what you saw in those pictures resonated with your study of the history of photography?

DR: Yeah. I had spent a massive amount of time looking at photographs in the FSA archive and the other collections on the Library of Congress website, and what I saw on Google Street View were pictures that looked like parallels or continuations of that work.F

Let’s look at some of the photos from FSA archive.

Negro going in colored entrance of movie house on Saturday afternoon, Belzoni, Mississippi Delta, Mississippi

有色人種用のエントランスから映画館へ入っていく黒人 ミシシッピ 1939年

Negro house in New Orleans, Louisiana, 1936, Walker Evans

ウォーカー・エヴァンスが撮影した黒人の家。

#34.966001, Helena, AR(2008), 2010, from A New American Picture

作品のテーマが見えてきましたね。リカルドがこのようなテーマに取り組むことになるのは育った環境が関係しているようです。

リカルド:父親が郊外の巨大な教会の牧師だったんだ。それだけでなく、祖父、ほとんどの叔父、親戚が宣教師や牧師という家庭で育ったんだ。カレッジでアメリカの歴史を勉強して、表向きには語られない歴史の暗部、現実にショックを受けた。特定の人種、特にアフリカン・アメリカンに対する信じられないほどひどい扱いにね。

毎週日曜日には教会に行き、世の中のきれいごとばかり教えられて信じてきたあとに、アメリカの現実を知った驚きや怒りが長い時間を経て作品づくりのモチベーションになっていきます。

はじめはメンフィスやミシシッピ、アラバマなどの南部の小さな町をストリートビューであてずっぽうにバーチャルトリップしていましたが、ドロシア・ラングやベン・シャーン、ウォーカー・エヴァンスなどが1930年代に訪れた町を(ストリートビュー上で)再訪したり、貧困地域に関するネット上の掲示板などで得た情報をもとに対象地域を絞っていきます。

アメリカ写真の歴史を意識しながら、今の時代を写すストリートビューという新しいツールを使って表現したこのシリーズ、「A New American Picture」というタイトルがしっくりきますね。

最後に、リカルドの活動すべてに必須のインターネットについて聞いてみましょう。

Now you know the subject of this work. What motivated Rickard to make it?

DR: My father was the pastor of a suburban mega church. Also my grandfather,most of my uncles, my brother-in-law,and many cousins were and are preachers and missionaries. When I studied American history in college, and was exposed to other points of view on America’s present and past, I was shocked by what I learned. I saw a side of America that was dark and incredibly brutal to many groups of people – African Americans, in particular.

In the end, the photographer talks about internet, which is essential to all of his activities.

インターネットの使い方

インタビュアー:インターネットが私たちの生活をバーチャルでより孤独なものにしているという主張もあるけど、少なくともあなたはそう思っていないように見える。それは世界を開き、写真の歴史を学び、行ったことのない場所を見ることができ、作品を広めることができる、完全に新しいライフスタイルと制作の助けになっているわけだ。

リカルド:考えるとすごく不思議だよ。アメリカの田舎に住んでいて*5、いま自分やっていること全部が10年前には実現不可能なことばかりだ。アート・ワールドにこんな疎外された場所からアート・スクールにも行かず入っていくこと、広大なアメリカをバーチャルに旅ができること、写真記事のオンライン・アーカイブをつくってそれに何万人もの人が毎月訪れること、それが全部一人でここ片田舎のスタジオからできるんだ。まったく新しい世界だよ。だけど新しいものが古いものを否定する必要はないと思っている。単純に発展、拡大しただけなんだよね。デジタルカメラが登場した前と後で写真が分断してしまったわけではなく、今までもこれからもすべてひとつのつながりであるはずなんだ。

EO: There is a great deal of concern right now that the Internet is making us more isolated, that we are all retreating into our own virtual worlds and becoming more disconnected from one another, but that has not been your experience. The web has opened up the world for you. It enabled you to educate yourself about the history of photography,  go places that you would otherwise have been unable to visit, develop a following for your work, and meet other photographers. Thanks to the Internet you have a completely new life.

DR: Yeah, it is really strange if you think about it. I am very isolated geographically, and what I have done could never have happened in prior decades. Entering the art world from a removed place and and without going to art school, traveling the country virtually, publishing an online archive and magazine that has tens of thoughsants of readers per month, and doing it alone from an isolated studio in a suburb, this is all because of the web, It’s a new world. But  the new doesn’t have to negate the old. I see it as an expansion, I don’t think there is a line of demarcation where all of a sudden, digital photography came in and it separated from everything is connected to what preceded it, as to what lies ahead.

*1 記事は英語ですが、写真や動画が豊富に見られます。一見の価値あり
*2 2007年にまずはアメリカの一部の都市からサービスをスタート。2013年現在世界中にエリアを拡大中。ストリートだけでなく、美術館の中やエベレストの頂上などあらゆる場所を撮影しネット上に公開。そのうち、申し込めばGoogleが家まで撮影に来て「Google自宅ビュー」で公開してくれる時代が来るかもしれません。
*3 大恐慌下のアメリカで、ルーズベルト大統領が出資した「前代未聞の規模を持つ社会調査」。南部を中心にアメリカ全土に写真家が飛んだ。
*4 アメリカ議会図書館(Library of Congress )のサイトで公開されています。
*5 リカルドは現在カリフォルニア州サクラメントを拠点に活動している。

Written by iseki ken

2013/06/02 at 21:28

Posted in site trekking