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写真とLaw 第2回 訴えられた写真家(後編)

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こんにちは。between the booksエディターの井関ケンです。

「写真とLaw」のコーナーでは、Arts and Lawの代表理事で弁護士の水野祐さんをお招きして、写真にまつわる法律の話をしていきたいと思います。

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第2回目「訴えられた写真家 パート2」の後編です(前編はこちら)。フランス人写真家Patric Cariou(パトリック・カリュー)の作品を自分の作品のなかに取り込んだRichard Prince(リチャード・プリンス)がカリューから訴えられました。著作権侵害の判断の基準はどういったところなのでしょうか?

続きをどうぞ。

水野: このケースでは、「フェアユース」という考え方がポイントになりました。

btb: フェアユース?フェルメールでしたら知っています。

水野:「フェアユース」とは、文字通り、諸事情からして許されてもよいような、公正(フェア)な利用(ユース)については、権利者の許可をとらずに行うことができ、著作権侵害にはならないという考え方です。「フェア」かどうかは、最終的には裁判所が決めます。日本の著作権法には規定がありませんが、アメリカやイギリスなどでは規定が存在します。

btb:「フェア」かどうかはどのように判断されるのでしょうか?

水野:アメリカの著作権法では、「フェア」であるか否かの判断基準として、「利用の目的と性格」、「著作物の性質」、「著作物全体における利用された量と重要性」、「著作物の潜在的市場または価値に対する影響」という4つの考慮要素が規定されています。近年の判例においては4つ目の要素、つまりその利用方法が、作品を利用された著作権者に対して不当な不利益を及ぼさないかという点が重視される傾向にあります。

btb: 著作権者に迷惑がかかるかどうかが大事なポイントのひとつということですね。フェアユースのわかりやすい例をあげていただけますか?

水野:たとえば、写真を撮影したら端っこの方にディズニーのキャラクターが入ったTシャツを着た人が写り込んでしまう場合がありますよね。ディズニーのキャラクターの絵柄は著作物ですが、この写真撮影はディズニーに無断で行うと著作権侵害になってしまうでしょうか?それはさすがにおかしいと誰もが思うはずです。それからインターネットで画像検索するとサムネイルとしてオリジナルを小さくしたイメージがでてきますよね。これもフェアユースの例としてよく挙げられます。


btb:  プリンスがマルボロの広告写真を複写した作品はどうなのでしょう?

Richard Prince, Untitled(cowboy), 1999

水野:プリンスは「広告に著作権があるなんて考えたことはない」という趣旨の発言をしているように、マルボロの作品についてもフェアユースだと考えているみたいですね。マルボロの広告写真の著作権はフィリップ・モリス社に帰属しているようですが、実際にプリンスとフィリップ・モリス社との間でどのようなやり取りがなされたのかについては明らかになっていません。

bttb:このマルボロの広告写真を撮影した写真家は、プリンスの作品をどう見るでしょうか?

水野:オリジナルを撮影した写真家は、プリンスからお金を取ったり、訴えたりするつもりはないけど、プリンスの作品が1億円ほどで売れたり、自分の写真をプリンスの作品でしか見たことない人がプリンスの写真だと誤解する出来事が増えてくるにつれ、不満を漏らし始めている、という記事を読んだことがあります。

btb: なるほど。しかし、プリンスは今回のカリューの写真の使用をフェアユースだと主張したということですが、認められなかった理由はなんですか?

Richard Prince, from the series Canal Zone

水野: プリンスの判決では、
・カリューの写真の本質を変えておらず、別の新しい(オリジナルな)作品になっているとはいえないこと
・ギャラリー等で高値で売買されるという商業的なものであること
・カリューの写真を必要以上に使用していること
・カリューへのリスペクトや事前の断りがなかったこと
・カリューよりも有名なプリンスがカリューの作品を使用した作品を発表することで、カリューの作品の価値や潜在的市場(マーケット)にダメージを与えたこと
などの理由から、プリンスによるカリューの作品の使用は「フェアユース」にはあたらないと判断されました。
ただし、プリンスが控訴しているので、第2審でもこの判断が維持されるかどうかはわかりません。

btb: 日本にはフェアユースと似たような法律はあるのですか?

水 野: 日本においても、「日本版フェアユース」の規定を導入すべきではないか、という声は強くありますが、現在のところ実現には至っていません。ただし、先ほど説 明した写真の写り込みの事案については、法改正が行われ、改正後の規定が施行される2013年1月1日から適法になります。

btb: とても勉強になりました。どうもありがとうございました。

Written by iseki ken

2012/09/04 at 10:29

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