betweenthebooks.com

写真とLaw 第2回 訴えられた写真家(前編)

without comments

こんにちは。between the booksエディターの井関ケンです。
「写真とLaw」のコーナーでは、Arts and Law*1の代表理事で弁護士の水野祐さんをお招きして、写真にまつわる法律の話をしていきたいと思います。

************************************

第2回目は、「訴えられた写真家 パート2」です。
写真家はなぜ訴えられたのでしょうか。

btb: 今回とりあげるケース、訴えられた写真家はアメリカ人のRichard Prince(リチャード・プリンス)です。

水野: リチャード・プリンスといえばマルボロの広告を複写した作品が有名ですね。



Richard Prince, Untitled (cowboy), 1989

btb: プリンスは広告写真や他のアーティストの作品など、既存のイメージを積極的に活用して自分の作品の中に取り入れるアプロプリエーションという手法で、写真作品をいろいろとつくっています。写真だけでなく絵画作品もたくさんあり写真家というよりは現代アートの作家ですね。

水野: アプロプリエーションの手法を使ったアート作品は、引用か盗用かなどグレーなところもあり、よくトラブルになります。

btb: まずはこちらの写真を見てください。これはフランス人の写真家Patric Cariou(パトリック・カリュー)がジャマイカのラスタファリアン*2を取材し撮影した作品です。

Patric Cariou, from Yes, Rasta“, 2000

水野: マイノリティな部族を追ったストレートなドキュメントのようですね。

btb: 続いてはこちらです。左がカリューのオリジナル。右はプリンスの作品です。

Left; Patric Cariou, from “Yes, Rasta”, 2000, right; Richard Prince, from the series Canal Zone, 2008

btb: これもそうです。

Richard Prince, from the series Canal Zone, 2008

btb: この作品を見て、オリジナルの写真を撮ったカリューがプリンスを訴えたんです*3。結論からいうと、プリンスは負けました(ただし、2012年8月現在プリンスが控訴中)。

水野: 実はよくアーティストやデザイナーから、「プリンスの手法は、なぜ訴えられないのか?」 という質問をよく受けます(笑)。マルボロの事例の際にもアメリカでは大変な議論になったと聞いています。実際には、紛争や裁判に至っているケースもあるようですが、和解して決着しているものが多いのであまり表面化していないようです。そのような中で、この件はもはや巨匠とも言える存在となったプリンスが敗訴したショッキングなケースとして話題になりました。

btb: ぱっと見ても著作権侵害してそうだ、という感じはしますが。判断の基準となったのはどういったところなのでしょうか?

後編へ続く

************************************

第 1回目のケースでは、ストリートで無断で写真を撮られた一般人が写真家を訴えたケースでしたが、今回はアーティスト同士の争いです。

訴えられたプリンスが裁判に負けた理由はどういったものだったのでしょうか。後編では、マルボロの広告写真を複写した作品との比較も含めながら、水野さんに説明いただきました。

お楽しみに。

*1 Arts and Lawは弁護士・会計士などの有資格の専門家の協働による芸術・文化への支援プログラムを中心とした団体です。さまざまなジャンルの表現活動とその担い手 の人々へ向けて、正確な専門知識の普及や無料相談の機会等を提供しています。Arts and Lawのサイトはこちら
*2 ジャマイカの黒人によるアフリカ回帰を唱える宗教・社会運動であるラスタファリアニズムを発端として現れた、エチオピアの皇帝ハイレ-セラシエ(本名Ras Tafari)を神と信仰する人々。ボブ・マーリーもラスタファリアン。
*3 訴訟は2008年。

Written by iseki ken

2012/09/01 at 15:10

Posted in site trekking