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今日の写真2010@佐原宏臣写真展 第1回(全3回)

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佐原宏臣という写真家を知っていますか?

おシャレな雑誌のファッション写真を撮るわけでもなく、ドコか地球の辺境に冒険しにいくわけでもなく、ましてやアートを気取って海外留学するでもない、コンペの賞なんかには全く興味がない、ちょっと頑固な写真家佐原宏臣を紹介します(ホンマタカシ)

 

2010年6月12日(土)、佐原宏臣写真展「何らかの煙の影響」の会場(表参道画廊)で、トークショー「今日の写真2010@佐原宏臣写真展」が開かれました。その模様を、全3回に渡ってお届けします。

 

佐原宏臣×ホンマタカシ×倉石信乃

表参道画廊にて

構成=タカザワケンジ

 

★15年前の「回転」


──今日のトークショーはホンマさんがやろうと言ったことから始まったそうですね。

ホンマ■そもそも僕が佐原くんの写真と出会ったのはだいぶ古くて、僕のアシスタントをやっていた森本美絵から、彼女と佐原くんがやっていた「回転」という写真同人誌を見せてもらったんです。その頃から佐原くんの写真に興味があったんですが、その後はしばらく忘れていて、久しぶりに新宿のギャラリーで佐原くんの写真を見ました。「回転」のころの感覚と変わらないなと思いましたね。「回転」は何年前くらいですか?

佐原■1995年なので15年前ですね。

ホンマ■写真の質っていうか、トーンなのかクセなのか。そのときと変わらないものって何だろう、と思いました。

倉石■私が佐原さんの写真を見たのも「回転」でした。まだ美術館に勤めていた頃ですが、送ってきていただいたんだと思います。学部の学生が出した雑誌としてはお金をかけて作っていて、主張もあるまじめな本だと思いました。あれは何号まで出したんですか?

佐原■4号です。

倉石■尾仲浩二さんにインタビューをしたり、単に写真を撮るだけじゃなくて、写真の現状をどう考えていこうか、二人で手探りで考えている感じがすごく面白かった。批評意識っていうのかな。写真ってどんなメディアなんだろうって自分の言葉で考えているところがよかったですね。その後も佐原さんの写真については、頭の片隅に残っていました。東京写真月間にこの表参道画廊で、私が選んだ写真家を紹介する展覧会を始めて今年で3年目なんですが、いい作家なのにあまり展覧会をしていないようで、だから実際見てみたいと思う作家を紹介してきました。今回はたまたまホンマさんと話していて佐原さんの名前が出て、「グラフィカ」という雑誌に載った佐原さんの写真を見ました。でも、サードディストリクトギャラリーの展示は見ることができなかった。その心残りもあって、今回、ぜひ、ということになりました。


★ロバート・フランク


佐原■僕自身は作家活動をしているという意識はなくて、生活をしながら写真を撮っているという感じです。サードディストリクトギャラリーがある場所は以前、ガレリアQというギャラリーだったんですが、その立ち上げメンバーの1人にくっついてDMづくりなんかをしていたのですが、仕事をしながらそこで3回写真展をやっています。ホンマさんは昔と同じ雰囲気があるとおっしゃっていましたけど、僕自身はかなり変わってきているような気がしています。というのは、大学を出て3年たった後、仕事で卒業アルバムの撮影と編集と営業をぜんぶ一人でやる仕事を7年くらいやっていたんですが、それまでやってきたカメラからのぞいて撮る意識とぜんぜん違っていました。子供たちの顔を見ていなければ撮れないんです。それまでは、風景やら人やらを自分のほうに引き寄せてシャッターを切ろうとしていたんだな、ということに初めて気づきました。そんなわけで、自分のなかでは「撮る感覚」は同じとは思えないんです。

ホンマ■もちろん、写真がまったく同じということではないと思います。倉石さんも「回転」を見たときのことが頭の片隅にあったと言っていましたけど、それと同じで、明確なイメージじゃないんですけど、ざらっとした触感なのか、ムードなのか、何か佐原臭があったんだと思うんです。

倉石■1995年に「回転」を出されたということですが、同じ95年に奇妙なイベントがあったことを思い出しました。私は当時勤務していた横浜美術館でロバート・フランクの展覧会を担当していたんですが、その当時、活動をはじめてあまり時間の経っていない金村修さん、野口里佳さん、楢橋朝子さん、原美樹子さんたちがロバート・フランクに写真を見せながら対話をするという、半分、非公開のイベントがあったんです。そのなかに佐原さんもいて、フランクが佐原さんの写真をかなり気に入ったんです。それで「写真を交換しよう」ということになった。そのときの佐原さんは6×6の正方形フォーマットの風景写真でしたね。一見あまりパッとしないけど、妙に心に残る感じの。

ホンマ■フランクのどんな写真をもらったの?

佐原■富士山の絵か写真が飾ってあって、その前にアイヌの人形が置いてあって。

ホンマ■ああ、わかった。

佐原■フランクさんは「習作だ」と言ってました。

ホンマ■フランクとの出会いはどうだったんですか?

佐原■僕はロバート・フランクの写真集も見たことがなかったんですよ。写真を始めて一年ちょっとだったので、ロバート・フランクの名前は知っていたけど、 大きい展覧会をやっている人というくらいしか。刺身をいっしょに食べたって思い出しかないですね(笑)。

 

ロバート・フランクからもらったプリント

 

★ピントグラスのなかの光


倉石■そのときの写真は、やっぱり自分の故郷を撮った写真でしたか?

佐原■いや……。

倉石■「回転」には静岡の写真が載っていましたよね。自分の故郷とか、身近な環境、自分がよく知っているものしか撮らないという頑固さはずっとつながっているような気がします。今回の展覧会も故郷と親戚ですよね。

佐原■その当時はほとんど知らない場所へ行って写真を撮るっていうことをしていた気がしますね。当時、八王子に住んでいたんですが、八王子を撮るときも知らない場所へ行って。別に電車に乗って遠くへ行かなくても知らない場所は近くにもあったから。光のきれいな時間を撮っていたんだと思います。

倉石■でも、光がきれいな時間の写真という印象がまったくないんだけど。

ホンマ■僕もまったくない(笑)。

佐原■うーん、そうですねえ。僕は一生懸命、きれいな光を見ていたような気がします。

ホンマ■でも、写真では再現されてないんだよね(笑)。

佐原■それは、技術的なことはかなりあったんだと思います(笑)。その頃に撮っていたのは風景ばっかりでしたね。「回転」を作っていたときにインタビューした尾仲浩二さんの写真がなぜか好きで、この人にインタビューするしかないな、と。電車に乗って、どこか知らない場所で降りて写真を撮る。そういうことでいいんだろうな、と思っていました。でも、尾仲さんみたいにアイレベルファインダーでは撮れなくて、6×6のウェストレベルファインダーで下を向いて撮っていました。

ホンマ■人に対してならわかるけど、風景に対してもまっすぐは見られなかった?(笑)

佐原■そうですね(笑)。ウェストレベルの四角いガラスのピントグラスのなかの光を見て判断するしかなかったんです。

ホンマ■アイレベルで見ると向き合うけど、ウェストレベルならピントグラスのなかだけの別の世界なんだ。

佐原■そうですね。その中でだけ考えていたんだと思います。ピントグラスに映った平面を見て考えていたんだと思います。

 

第2回に続く。


<佐原宏臣(さはらひろおみ)プロフィール>

1973年静岡県生まれ。1997年東京造形大学卒業。毎日新聞社出版局クロニクル編集部で編集アシスタントを経て、卒業アルバム制作会社に営業カメラマンとして7年間勤務。

1995年    写真同人誌『回転』を写真家森本美絵氏と刊行
1997年    卒業制作展「悲しみの風景 variations on the misery」東京造形大学構内
1998年    個展「河」 ガレリアQ(新宿)
1999年    個展「少年をとりまいていた環境」 ガレリアQ
2000年    個展「何らかの煙の影響」 ガレリアQ
2002年    写真家関美比古氏の追悼写真集『carnation』 共同企画編集・制作
2008年    写真家内野雅文氏の追悼資料集『内野雅文1973-2008 Photo-Document 追悼+資料集』共同企画編集・制作
2009年    グループ展「この壁を飾るのは誰、この台上を埋めるのは君」 早稲田大学ギャラリー/ビジュアルアーツギャラリー東京
2010年    個展「何らかの煙の影響」 サードディストリクトギャラリー(新宿)
2010年    東京写真月間2010 倉石信乃企画 個展「何らかの煙の影響」表参道画廊


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Written by manami takahashi

2010/08/27 at 21:13

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